2011年7月19日火曜日

企業利用におけるTwitterとFacebookの違い


「企業ではTwitterとFacebookはどちらを使う良いのか」という議論をよく耳にするが、TwitterとFacebookは性質が違うものなので、それぞれの性質を理解した上で、使い分けることが望ましい。

結論から言うとTwitterは「情報プラットフォーム」、Facebookは「コミュニケーションプラットフォーム」である。


■TwitterとFacebookのソーシャルグラフ
これらの違いは、それぞれが持っているソーシャルグラフから来る。

Twitterが、一方的に「Follow」できるのに対して、Facebookの「友達」申請は双方向に承認されないと成立しない。



Twitterは、相手が実際に知っている人であろうが、知らない人であろうが発言内容に興味があればFollowすることが出来る。つまりその人の発信する情報に興味があれば、誰でもその発言をFollowすることが出来る。

これに対してFacebookでは、相手から承認されると思わない限り「友達」申請はしない。リアルの世界で多少でも繋がりのある人とコミュニケーションをするために友だち申請をする。

このことから、Twitterでは発言内容そのもの、つまり情報が流通し、Facebookではコミュニケーションが活発になることが分かる。


■TwitterとFacebookの比較
これらを踏まえて、TwitterとFacebookの性質をいくつかの観点で比較してみた。


企業でTwitter、Facebookを利用する場合は併用し、Twitterで情報発信+情報収集をしながらFacebookへ誘導し、Facebookでコミュニケーションを深めるのが良い。

ここで、Twitterは、「情報発信」に利用することは容易に想像がつくが、「情報収集」についても非常に有用なツールであることに注目したい。

Facebookでは、情報の流通範囲は発信者の友達のつながりの範囲内を出にくいが、Twitterでの発言はすべてオープンになるため、すべて検索対象にできる。

ある程度の企業であれば、毎日のように消費者が自社ブランドに関するつぶやきをしており、企業はその全てを検索することができる。

これらのつぶやきは、これまでグループインタビューなどで集めていた一部のコアユーザーの発言ではない。消費者が何の拘束もない中で、自然に発言したもので、これまでは聞くことの出来なかった自社に関するうわさ話、自社サービスに対するうわさ話を聞くことが出来るのである。

これらのつぶやきは、マーケティング、ブランディング、人材採用、カスタマーサポートなどに有効活用することが出来るだろう。


■日本でのTwitterとFacebookの役割
これまでTwitterは、日本ではコミュニケーションツールとして利用しているユーザーが多かったが、Twitterにコミュニケーションを求めているユーザーは、少しずつFacebookへ移行していると考えられる。

ここ数ヶ月のTwitterとFacebookのアクティブユーザー数の推移はそれを表していると言える。


出所:in the looop「mixi, Twitter, Facebook 2011年6月最新ニールセン調査、Facebook利用者872万人へ」

アメリカでは、そもそもFacebookがユーザーを集めている中で、Twitterが後発でユーザー数を伸ばしたため、日本のようにTwitterの方がユーザー数が多いという状況は起きなかった。

今後は、日本でも「情報プラットフォーム」としてのTwitterと「コミュニケーションプラットフォーム」としてのFacebookという住み分けが進み、Twitterのアクティブユーザー数をFacebookが抜くという構図が予想される。



2011年7月4日月曜日

フェイスブック時代のオープン企業戦略(書評)


ソーシャルメディア時代の企業戦略については、『グランズウェル』が有名で、今やバイブルとも言える存在になっている。

ここには、インターネットのテクノロジーによって、人々が繋がりだして、企業にも大きな影響を及ぼすようになった理由とその流れに乗って、企業はどのようにソーシャルテクノロジーを活用するべきか、を提案している。



最近になって、この『グランズウェル』の続編が二冊日本語化された。
二冊ともグランズウェルの最終章「グランズウェルで変革を促す」に通ずる内容になっている。企業がグランズウェル(ソーシャルメディア時代の人々の活動)を充分に活用するには、企業がどのような組織になるべきか、どのような組織がうまくグランズウェルを活用しているか、ということを書いている。

『グランズウェル』は、シャーリーン・リーとジョシュ・バーノフという二名によって書かれた本であるが、この二名が別々に本を書いた。

ジョシュ・バーノフが書いたのが、『エンパワード』である。


こちらは、社内に「HERO(Highly Empowered and Resourceful Operatives)」と呼ばれるソーシャルメディアを主導するチームを形成し、そのチームを中心に社内変革を迫ることを提案している。「HERO」がやるべき事と経営層とITチームがどのように連携する必要があるかを書いている。

もう一方の著者、シャーリーン・リーが書いたのが、『フェイスブック時代のオープン企業戦略』だ。




こちらは、原題が『Open Leadership』であることからも分かるように、ソーシャルメディア時代のリーダーシップに焦点を当てた本である。

こちらの本がすごく面白い。

基本コンセプトは、企業がオープンにならなければいけないということだ。
企業がオープンになるとはどういうことか、オープンにしていくためにはどうすれば良いか、オープンになった会社は、どのようにそうなったのか、を分かりやすく説明している。

ソーシャルメディアが発展することで、ウェブ上に書き込みをする人の数は、どんどん増えて、企業のやっていることは良いことも悪いことも、すごい速さで明るみに出る。

このような状況では、リーダーには透明性と真実性が求められる。
これは、コトラーのマーケティング3.0でも述べられている内容である。

今は、Twitterやブログで、個人の消費者が世の中に大きな影響を与えることが出来るようになっている。企業は、このソーシャルメディアから発生するクチコミに適切に対応しなければ、ひとつのミスから致命的なダメージを負ったり、更に大きな問題を世の中にさらけ出したりすることになる。

ソーシャルメディアに適切に向きあうのに必要になるのが、透明性と真実性を中心コンセプトにおいたオープンリーダーシップである。

ここに、この本に関するシャーリーン・リーのインタビューがある。


ソーシャルメディアは、今やインターネットの世界を変えているだけではない。
ソーシャルメディアは、インターネットの枠を飛び越して、リアルな世の中にまで影響を及ぼし始めている。

人々の生活は、見た目には大きく変わったようには見えないが、人々の情報収集の方法、意思決定までの流れ、人生での価値観などは大きく変わっている。

このような世の中で、企業が消費者に価値を提供していくためには、企業のあり方そのものが変革を迫られている。

この本には、ソーシャルメディアに企業が本質的に対応するために必要なことが書かれている。企業のオープン化とは、企業体質に根本的に関わることなので一朝一夕に対応できることではないかもしれないが、これを意識して組織を変えていくことは必要である。